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PRESIDENT MESSAGE

社長の想い

1993年創業のウェーブハウスは、岡山の不動産売買・賃貸・投資を手掛けている。代表取締役の市川周治氏は、20歳のときに宅建資格を取得。そのまま不動産会社に就職した。バブル時代のことである。「土地を買収して転売することで、一晩で億単位の金が儲かる世界が目の前にありました。わたしは入社したばかりで、賃貸の接客や家賃の集金業務をこなす日々でしたが、後から振り返ると、それがまさにバブルの絶頂だったんだなあと知るわけです」。

しかし、後に起業を果たす市川青年の先見の明とでも言うべきか。二十歳前後の若者は、それは一時の世界に過ぎないと感じていた。「入社して5年間のうちに、バブルは崩壊しました。わたしはまだ社会人として智恵の働く年齢でもなく、堅実に賃貸の窓口をやりつづけていましたが、バブル崩壊を何となく自分では予測していました」。直接不動産取引をして大金を手にしたわけではなくとも、平成元年の年末にはタクシー待ちの大行列ができていたなど、自分の目でバブルの光景を見て、その空気を吸った。

「実態のない経済でしたが、バブルの体験は、貴重な経験だったと思いますよ。なぜお金が動くのか、そこはしっかり見て学ぼうとしました」。バブルが弾けても不動産賃貸を仲介する仕事は必ず残ると読んでいた市川氏は、26歳で独立を果たした。


「本当にいいものを消費者に提供するために、不動産業界の旧態依然とした業態をぶちこわしたかった」と当時の決意を振り返る。「父ちゃん、母ちゃんだけでやっている不動産会社では、提供できる情報にも限りがあります。しかも、業界として本当にいい物件情報は、公になる前に水面下で取引をしてしまう。そういう商習慣にも風穴を開けたかった」と言う。

しかし、独立してもやっていけそうな手応えは「根拠のない自信」だけ。岡山の西古松にある6坪6万円の物件を店舗として開業。「接客は得意でしたが、それは『お客さまが来てくれれば』という前提」と苦笑。

開店したばかりの不動産会社に、客が見込みどおりに入ってくるわけではなかった。しかし、「かみさんと正社員2人の4人でスタートしたので、人件費は売上にかかわらず必要でしょう」。国民金融公庫から数百万円、信用金庫からも数百万円と事業借り入れを起こすも、店の電話はいっこうに鳴らない。客は誰も来ない。あまりにも電話が鳴らないので、「会社に電話してみてくれないか」と奥様にお願いしたことも。もちろん、回線はちゃんとつながっていた…。

資金が残り100万になったとき、「最後の賭けとして、客が来るものに全額投資しよう!」と腹をくくった。不動産情報紙に「100万円分の誌面を買いたい」と電話。一方でお客さまが来たときのために、万全の体制を敷いた。
それが功を奏した。見事に的中した。なんと出稿したとたん、店に行列ができた!「営業時間を延長したり、夜は寝ずに書類を処理したりするなどして、とかく来ていただいたすべてのお客さまをご対応しました」。そして、業績は一気に拡大した。




「バブルの渦中にいた人間は、とにかく達成意欲が半端じゃないんです。やればやっただけ成果が出ることを、身をもって体験しているわけですから。高揚感もありましたし、エネルギーもすごい」。しかし、時代は変わった。かつての感覚でマネージメントしても通用しないと見るのが市川社長の感覚。「ずば抜けたトップセールスマンが1人いる組織よりも、スタッフ全体のベースを上げることが大切だと思っています。1人のカリスマから、全体で均して、収益を安定させることです。言わば、根性論から仕組化へということですね」。そして、賃貸から始まった同社の事業は、やがて売買にも広がっていった。

同社にお客さまが訪れると、まず2時間かけて面談を行う。ご家族のことや転居理由、ニーズなど詳細に耳を傾ける。「お客さまは、ご希望を持ってこられますが、不動産のプロではありません。例えばいくらの物件であれば無理のない範囲かといったことも正しく認識されていないケースが大半です。価格、間取り、場所など様々なご希望をお聞きしますが、プロとしてご希望の本質を見抜いて、ふさわしい物件を探します」。

では、なぜ岡山において圧倒的な支持を得ているのか。それは、取引実績がトップクラスで、圧倒的に多いからである。取引実績の多さは、売買の適正価格を算出する精度を高めることにつながる。同じエリアのマンションなら、1戸2戸と売買を仲介するたびに、買い手も売り手も納得する価格を自信を持って弾き出す。「任意のエリアにおける相場は、競合他社に負けないほど詳しく把握しています。買い手にとっては安心感に。売り主にすれば、売買成立までの時間をロスしなくて済むというメリットも大きいと思います」。


賃貸と売買にとどまらず、市川社長はこれからの不動産業のあり方を模索する。中古マンションを1棟買い取って、リノベーションして賃貸するというのも、その一つ。「新築のニーズが高い一方で、これからの時代は人口が減少し、空室のマンションも増えてきます。古くなって入居者がつかず、資産価値を生まない物件を、リノベーションによって価値を高めることが、これからの時代、必要なのだと思います」。

もちろん、省エネや太陽光発電などの新エネルギーを活用する提案など、これからの快適な暮らしを見つめて、同社の事業使命は、まだまだ尽きることがない。しかし、市川社長は言う。「わたしたちは、どこまでいっても不動産の仲介者であることに変わりはありません。その商品を誰から買おうが、商品に変わりはないのです。ですから、大事なのは、人。ウェーブハウスにかかわるすべての人の幸せを願うことが、わたしたちの究極の使命だと思っています」。先見の明を持った企業トップのまなざしは、事業を支える人に向けられた。今年(2013年)、起業から20年目を迎えた。「失われた20年」を、実に昇り調子で生き抜いたこととなる。人を大切に思う、地に足のついた経営者の考えに、深く共感した。


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